ブ~~~~ン
目が覚めた時に耳に入って来たのは、蚊の羽音。
そして、体感したのは猛烈な痒さ。
「や、やられた・・・。しかも3か所」
うつぶせ寝をしていて、掛布団からはみ出している腕と手と指。
何が痒いって、指が一番痒い!
爪のすぐ際の所!
よりによって、こんな微妙な場所から血を吸うなんて、なんて憎らしい。
蚊取り線香的な物と痒み止めを借りるべく、ナースステーションに向かう。
しかし、残念ながら蚊取り線香も痒み止めもないとの事。
いや、正確にはリキッドタイプの蚊取り線香があるにはあったのですが、中身が空でした。
どうやら、入院患者さんで蚊に刺される人は稀なようです。
仕方なく看護師さんから保冷剤を借りて部屋に戻る。
私が入院している病室は、カーテンで区切ることができて気分は半分個室だけれども、実は4人部屋。
同室には、白内障のご高齢のご婦人が2人入院中。
「他の人は刺されていないのかしら?」
そんなことを思いながらベッドに入ると、
ブ~~~~ン
私の周りを蚊が飛び始める。
「フッフッフ、3か所も吸っておきながら、まだ私から血を吸おうだなんて」
蚊を撃退すべく、起き上がって両手で蚊を狙いますが、いかんせん下を向いた状態で戦わなければならないため、こちらの圧倒的不利。
かすりもしません。
「ターゲットは他にも2人いるというのに、私に狙いを定めるとは・・・」
そうなんです。私はよく蚊に刺されます。
夫と2人で並んで寝ていても、私だけが何カ所も刺されて夫は無傷、という事がよくあります。
おそらく、足裏の細菌の数が他の人よりも多いのでしょう。
家であれば、刺されたところにお灸をして痒みとはおさらばできるのですが、お借りした保冷剤、むしろ痒みを増強している感じです。
ただでさえ額の痛みで我慢の閾値は下がっているのに、我慢の限界はすぐそこです。
ブ~~~~ン
ブ~~~~ン
シーン
いか~~~ん、刺される~~~~!!
・・・ブチッ(脳の中で聞こえた音)
はい、限界を超えました。
この状態で寝るのは無理です。
もう1度ナースステーションに行き、まだ蚊が狙っていることをアピールし、何とかならないかと訴えてみました。
すると、本当だったら入院患者が行ってはいけない地下のコンビニに、看護師さんが付き添って言ってくれるとの事。
喜び勇んでお財布を握りしめ、エレベーターにて地下へ。
しかし
残念ながら、虫刺されに関連するグッズは皆無。
諦めきれない私は、外のお店に買いに出かけてはいけないでしょうか?と食い下がる。
しかし、外に出るには医師の許可が必要との事。
もう寝ているかもしれないし、いちいち許可をもらいに行ってもらうのも申し訳ないし、何といってもそんな手間が面倒くさい。
はい、いいです。諦めました。
だからと言って自分のベッドに戻る事は出来ず、私の行くべきところは一つです。
それは、
トイレ
最近の病院のトイレって、とてもきれいなんですよね。
トイレの中で便座に座って顔を下向きにして一息つく。
し、静かですっ
蚊の羽音がしないって、なんて平和なのでしょう!
暫くそうしていると、
トントン
とトイレの扉をノックする音が。
扉を開けると、高齢のご婦人が目の前に立っていた。