網膜剥離体験記⑥

手術日当時、朝から瞳孔を開く目薬を30分おきに、手術をするまで続ける。

2人の医師から注意事項として、手術中は絶対に体を動かさないようにと言われる。
咳をしたくなったり何かあれば、体を動かさずに口で言うようにとの事。

歯医者さんでは、痛くなったら手を挙げてください、とよく言われるけれど、ここでは、何かあれば手を動かさずに口で言わなければならないらしい。

微動だにせずに私は手術時間を耐えられるのだろうか?

ただただ心配しかない。

執刀医の方から「下の瞼に麻酔の注射をするのですが、ちょっと痛いかもしれません。でも、痛くて注射を中断したことはないので安心してください」との事。

下の瞼に注射?
想像するだけでも痛い。

痛みを我慢できなくて中断する初めての患者になったらどうしよう・・・

いや、考えるのはよそう。
そうなったらそうなったで、話のタネになるから良しとしよう。

「手術中はどこを見ていればいいですか?」と担当医に質問したところ、「ボーッと前を見ていてもらえばいいですよ」との答え。

前をズーッと見続ける・・・
・・・
前を見ているだけなら、大丈夫かな。
チラッと横を向いたらどうなるんだろうか?

いやいや、考えても仕方がない。
何とかなるでしょう。

昼近くになって、とうとう手術の順番が回ってきた。

手術後部屋に戻る時、車いすに乗せてもらってくる関係で、手術に向かう時も車いす。

体が元気な状態で車いすに乗るのは少し変な感じだけれど、なかなかできない経験なので大いに満喫しました。

子供の頃、台車に乗って遊んで以来の感覚です。
ちょっと楽しい。

長い廊下を進んで手術室に入ると、思っていたよりも大勢のスタッフさん。

テレビで見る手術シーンよりも少し人数が多い感じ。
大学病院だからなのかな?

色々な機械につながれ、自分の拍動が大きな音で聞こえる。
う~ん、緊張する。

そしていよいよ、下瞼の注射。

痛い、確かに痛いのは痛い。
でも、我慢できないほどではない。

問題は、肉体的な痛みよりも精神的な痛み。

下瞼に今、正に今、注射針がブッスリと刺さっているという事実。

嫌がおうにもB級のスプラッター映画を思い出さずにはいられない。


怖さが痛い!!!

心が痛い!!!

いやいや、網膜剥離(目の奥の手術)をこの後するんですけどね。
それでも怖かった~。




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